2021年度の特別区経験者採用試験の「論文試験」について、以下のとおり講評を掲載します。
1.職務経験論文について
【出題内容】
仕事における目標設定と振り返りについて、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分における立場として論じてください。
【講評】
今年の出題については、社会人として基本的な事項(公務員だろうが民間企業だろうが大切な仕事の仕方)を問うものであり、出題の内容自体は比較的優しいものであった。
しかし、その出題のされ方に戸惑った受験生が多かったと思われる。
なぜなら、例年の試験では「○○について」と1つだけを問うものが基本であったが、今年の試験は「○○と○○について」と2つを問うものであり、初めての出題形式となっている。
出題傾向の変化と言っていいだろう。このため、どのような構成や流れで論じていくべきか悩んだ受験生が多かったと想定される。
論文の構成や流れについては、唯一の正解はなく、受験生によって異なるが、以下の3点について触れておくと一定の評価を得られたものと考える。
1つ目は、目標設定や振り返りの意義(重要性)についてである。なぜ、職務の遂行にあたって目標設定や振り返りが大切なのかを述べて、出題の意図を正確に理解できていることを示しておきたい。
2つ目は、目標設定や振り返りについて、具体的にどのように取り組むべきかを述べておきたい。
例えば、単に目標を設定するのではなく、「組織全体の目標や部署の目標といった上位目標に沿った形で自身の目標を設定すること(上位計画に合わせた目標を設定すること)」や「短期・長期の視点から目標を設定すること」などが必要になる。
また、振り返りについては、「定期的に上司に報告・連絡・相談を行うこと」や「状況に応じて柔軟に目標を見直すこと」などに触れてもいいだろう。いずれにせよ、自身の職務経験を踏まえて、具体的な形で目標設定や振り返りのあり方を述べていけば問題ないだろう。
3つ目は、区職員としてどのように目標設定や振り返りに取り組んでいくのかという抱負や決意についても簡単に触れておくとよいだろう。
特に、ここの部分で1級職や2級職などの立場でどのように取り組んでいくのかと述べられていると、テーマにも合致した論文になっていくと考える。
もちろん、テーマから逸れてなければ、この3つ以外の観点に触れてもまったく問題ないし、上記3つの1つ目について触れてなくても問題ない。
職務経験論文は、課題式論文よりも構成や内容の自由度が高いため、今回の講評は1つの参考例としてほしい。
今回の論文に自信がない受験生も、出題傾向の変化で他の受験生も自信がない状態となっていることが想定されるため、ぜひ2次試験に向けた準備を進めていくことが重要である。
2.課題式論文について
【出題内容】
1.インターネットを活用した誰もが利用できる行政手続に向けた取組について
2.持続可能な財政運営と区民サービスについて
【講評】
今回の課題式論文について全体の感想から述べていきたい。
まずは率直に言って、どちらのテーマもある程度の準備をしていた受験生にとっては書きやすい内容であったと思われる。
1つ目のテーマについては、過去問にはない出題であったが、予想や準備をしやすいテーマであった。
6月に公表したGravityのコラムにおいても「行政のデジタル化」を予想テーマの1つとして挙げており、デジタル技術の活用や区民への配慮などについて事前に論文添削を受けていた受験生からは「準備していたネタで十分に対応できた」との報告が入っている。
今回のテーマはコロナ禍におけるオンライン活用という最近の流れからも、予想や準備をしやすいものであった。
2つ目のテーマについては、近年の過去問と同じようなテーマであった。
2017年の「最少の経費で最大の効果を生む区政運営」や2018年の「行政運営の効率化」などの過去問に取り組んでいた受験生にとっては、書きやすい内容であっただろう。
また、Gravityの予想テーマで挙げていた「民間活力の活用」・「自治体間連携の推進」・「区民満足度の向上」の3つのテーマを準備していた受験生にとっても、準備していたネタをそのまま利用することができたのではないだろうか。
以上の点から、今年のテーマは昨年のテーマと比べても、準備をしてきた受験生がそのまま成果を発揮しやすいものであった。
次に、各テーマで論じるべき内容に関する講評をしていきたい。
1つ目のテーマについてであるが、特に気を付けるべきは、「誰もが利用できる」という文言であろう。
単にインターネットを活用するための方策を述べるのではなく、区内で生活する「誰も」に配慮した内容を論じなくてはならない。
例えば、スマートフォンを持たない・利用できない高齢者などへの対応や、日本語に不慣れな外国人住民に対して分かりやすく使いやすい手続方法を整備することなどが考えられる。
「誰もが利用できる」という文言に着目できたかどうかが、評価の分かれ目になるものと考える。
2つ目のテーマについては、「できるだけ行政運営のコストを下げながら、いかにして区民サービスの維持・向上を図るか」という対立した課題をうまく両立させられる方策を論じられたかどうかが評価の分かれ目となってくる。
単にコスト削減の方策について論じるだけでは不十分であろう。
例えば、民間活力を活用して運営コストの削減を図りながら、民間の技術やノウハウを活用してサービスの向上を図るといった流れで論じていくことが求められる。
このように「コスト削減」と「サービス向上」の双方の視点から論じられていれば、高得点が期待できるであろう。
講評は以上であるが、論文試験が思いどおりにいかなかった受験生もしっかりと2次試験を見据えて準備を進めてほしい。
例年、「1次試験に合格すると思わなくて2次試験試験の準備をしてませんでした」という相談が寄せられる。
試験の結果は合格発表日まで分からない。
1次試験の自己評価だけで2次試験への対策を諦めることがないように。
1次試験が満足できる結果でなかったのなら、なおさら2次試験で大きく挽回できるように早期の準備を進めていかなければならない。
公務員試験は長丁場で大変だが、気持ちを切り替えて面接対策に取り組んでほしい。
【最終更新日】2024-03-15
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